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東京高等裁判所 昭和25年(う)43号 判決

被告人

川島七郎

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役参年に処する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

本件公訴事実中未成年者誘拐の点についての公訴はこれを棄却する。

理由

弁護人渡辺吉男控訴趣意第一点について。

原審第四回公判調書の記載によれば、原審判決は、同公判において強姦致傷の被害者田口寿子を証人として尋問するに当り、善良の風俗を害する虞のあることを理由として審理を公開しないで同証人を尋問する旨決定を宣した上これを行い、これが尋問に関する手続の終了後、更に審理を続行するにつき、審理を公開する旨の決定を宣した形跡のないことが明らかであるから、爾後の審理が非公開のまま行われたことが推定される。果して然らば少くとも、右証人尋問に関して行われた手続を除く爾後における非公開のまま行われた公判手続は、憲法第三十七条第一項に所謂被告人の有する公開裁判を受ける権利をその実なきに帰せしめた憲法に違反する手続であつて、仮令後日公判手続の更新された事実があるとしても、右公判手続自体が適法なものとなることのないことは洵に所論の通りである。然し乍ら、それがため爾後更新された公判手続迄これが違法となる理由はなく、従つて原審第六回公判期日において、公判手続の更新審理されたことの明らかな本件においては、他に訴訟手続上時段の違法とすべき事由なき限り、公判手続更新前において、訴訟手続に前叙の如き憲法に違反する事実があるからと言つて直ちに原判決を破棄すべき事由と為すを得ない。論旨は理由がない。

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